俺達はフィフティーズかぶれの連中が良く集まるというシンガポールナイトという酒場に向かっていた。
昨日のムラさんの言葉が思い出された。「メンバーを連れてくるんはいいけど20人も30人も連れてくんなよ。遠藤」と。
俺は「ハイ分かりました。日曜日以外はそんなにメンバーは集まらないんですよ」と言った。
そして、現実に俺の後ろをついて来ているメンバーはサブリーダーの石川、そしてメンバーのハラダ、カワムラ、オクダ、キヨノ、ハギノ、フカダの7人だった。
俺達は表参道と明治通りの交差点を右折して渋谷方面へとバイクを走らせた。
宮下公園の信号から50メートルほど手前の路地を左に曲がった。
前方の左側にネオンが輝いている。「あそこだな」とすぐにわかった。
50年代のアメリカとトロピカルがミックスしたようなたたずまいだった。
建物の壁はブルーに塗られ、英語と数字が書かれたデザインでトロピカルを醸し出している。
壁の前に黒のZⅡが四台停まっていた。
隣りを見るとフィフティーズ好きな連中が好んで乗るビートルやらオールドアメリカンの改造車が停めてあった。
あたりはまるでアメリカングラフィティの映画に出てくるような雰囲気の光景だった。
俺はクルマには興味は無く停めてあった黒のZⅡを見ていた。
するとハラダが「クールスっすかね?」と。
「かもな。でも誰なのだろうか?」と。
「ムラさんじゃないっすか?」と今後はカワムラが訊いてきた。
「ムラさんは確かハーレーのFX系だと思いますよ」とキヨノ。
メンバーのやり取りを横目に俺は時計を確認した。
「ムラさんとの約束の時間より30分もまだ早いのか~」と思いながらも
「とにかく中に入ろうか」とメンバーに声を掛けていた。
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バッドエンジェルス遠藤夏輝と越冬隊4人組との再会
すると俺を差し置いてフカダがドアのノブに手を掛けようとしたその瞬間
ドアが中から勢いよく開き、フカダはその反動でおでこと手を強打して後ろに倒れてしまった。 「うっ!イテ!」とうめき声をあげるフカダ。
すると中から怒鳴り声が聞こえてくるではないか!
「ざけんじゃねーぞこの野郎」
「上等だテメエら!」
「クールスモドキが粋がってんじゃねーぞ」
「外に出ろ!」と言いながら10人くらいの塊が中から出てきた。
よく見ると黒の革ジャンにジーパンをはいた四人とおそろいのスタジアムジャンパーとツータックのスラックスで決めたフィフティーズな連中が出てきた。
スタジャンには「MEGURO TEDDY BOYS」と刺繍したワッペンが貼ってあった。
黒の革ジャンのクールスモドキの連中もテディーボーイズの連中も共にリーゼントでバッチリ決まっている。
「あれ、遠藤君 奴らは?」とハラダが怪訝そうな顔をしている。
それを見て俺はハラダと同じことを直感した。
「奴らはリキなんかじゃねーか」と。
クールスモドキと言われている黒の革ジャンの4人に向かって俺は言った。
「リキ久しぶりジャーねーか」と。
すると「え、え、え、遠藤!?」
元ルート20カークラブのメンバーだったリキ、テツ、タロウ、ジロウだった。
本名はリキヤにテツヤそれにケイタロウにセイジロウのはずだが自分たちで
リキとかテツとか呼び合っている憎めない連中だった。
噂に聞けばクールスのピッピさんにまで迷惑を掛けたことがあるとか。
ルート20に居た時にも中途半端なことばかりしていたので、破門にしたのだった。
「なんかトラブルか?」とリキに訊いてみる。
するとテディボーイのリーダー格のやつが「関係ない奴は引っ込んでろ!」と。
俺はそいつを睨め付け「俺はこいつと話しているんだよ。テメーは黙ってろ!」
するとテディボーイズの連中はリキたちをほったらかし、俺達を威嚇してきた。
「おい、お前たちの相手は俺達だろう!奴らはヤバいよ」とリキ。
「リキ、そこをどいてろ! 皆まとめてやってやるから」と。
するとリキが「あいつは元ルート20カークラブの三代目総長をしていた遠藤夏輝だ。
奴に関わらない方がいいぞ。それにCRS連合を取り付けた張本人だからお前たちの手に負えるやつじゃねんだよ」と。
俺は相変わらずリキたちは口だけは達者だなと思っていた。
俺はテディボーイに向かって「今はルート20じゃなくてバッドエンジェルスの遠藤だけど、やるんならやるぜ」と。
すると、テディボーイはじり貧となり、挙句の果てには「すいませんでした」と
尻尾を丸めて逃げて行った。
そして、リキたちもどさくさに紛れて逃げようとしたので、「今度半端なことしやがったら俺が許さねえからな」と。
「わかったよ遠藤、じゃー」と言いながら逃げ去るように出て行くのと同時に
ムラさんが中に入ってきた。
遠藤夏輝が感じ取った村山一海の違和感とは
ムラさんが何か感じたように「何かあったのか遠藤?」と訊いてきた。
「いや、なにもないっすよ」と言いながらカウンター席に座った。
ムラさんはバーテンに向かって「いつものやつ」と注文。
俺たちもムラさんに従ってクリームソーダを注文したのだった。
メンバー達は店内のフィフティーズな雰囲気に圧倒され「スゲーなー」と言いながら店内を見回していた。
するとキヨノが壁を指さして「あれ、遠藤君」と。
指さす方を見るとそこには「TOO FAST TO LIVE TOO YOUNG TO DIE」
その言葉はバッドエンジェルスの標語だった。
そして、ムラさんと色々な話をしていた俺は・・・
「舘さんはリーダーで大変ですよね?」というと
「何が大変なんだ!?」とムラさん。
何か敏感に絡んできた。
「いや~この間、楽屋にお邪魔したときに孤独というか何か一人的なものを感じたんで」
するとムラさんは「あれはひろしの常套手段さ。ポーズしてんだよ。ポーズを
ひろしは大変なんかじゃねーんだよ」と。
「ポーズなんすか?じゃいつもは違うんですか?」と訊いてみた。
すると「知らんわ」と投げやりの言い方をして眉間にしわを寄せた。
俺は聞かない方が良かったと思った。隣りにいた石川も何かを感じたらしい。
「ムラさんは舘さんのことをよくは思っていない」と確信。
そして俺は思った。
岩城さんやマチャミさんピッピさんとはこの人は違うと。。。
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